和田彫金工房|五代続く彫金の手が彫る、日本のお守り

和田彫金工房は、富山県高岡市で1919年から続く金属彫金の工房です。曾祖父・金谷実が創業した金谷彫金所をルーツに、現在は5代目の和田瞬佑が、その技と美意識を今の時代へとつないでいます。
この工房に息づいているのは、寺社装飾や仏具を支えてきた百年の手仕事と、漫画・アニメ・ファッションへと広がる日本のビジュアル文化。和田彫金工房のものづくりは、その二つの流れが静かに重なるところから生まれています。
デジタルから、伝統へ。戻った先に見えたもの

5代目を継ぐ和田瞬佑は、前職で東京のゲーム会社にCGデザイナーとして勤めていました。映像やキャラクター、デジタル表現の最前線で過ごすなかでも、心のどこかにあり続けたのが、家業として受け継がれてきた彫金の世界でした。
家業に戻り、伝統的な彫金の現場に身を置いたとき、改めて見えてきたものがありました。寺社装飾の意匠、漫画やアニメに描かれるキャラクター、ファッションのモチーフ、そして刺青のかたち。それらに共通して流れているのは、龍・鳳凰・般若をはじめとする、日本独自のビジュアル言語でした。
時代も分野も違う場所で、同じモチーフが繰り返し愛されている。それにもかかわらず、その文化を日常のなかで自然に身につけられるプロダクトは、まだ多くありません。デジタルと伝統工芸の両方を知るからこそ見えたこの余白が、和田彫金工房の新たなものづくりの出発点になりました。
ものがたりを彫る、ものづくり。― 和田彫金工房 理念
約400年の金工の地、富山県高岡
工房を構えるのは、富山県高岡市。約400年の歴史を持つ金属工芸の産地として、全国でも知られる土地です。
銅や真鍮の鋳造、そして金属に色を与える着色技術において、高岡は今もなお日本有数の集積地です。寺院や神社に納められる仏具・祭具の多くが、この地の技術に支えられています。
1919年、曾祖父・金谷実が金谷彫金所を開いたのも、この高岡でした。それから100年以上。土地に蓄積された技とともに、和田彫金工房もまた、この場所で歩みを重ねてきました。

変わらないもの、変えてきたもの
和田彫金工房のものづくりには、受け継いできた伝統と、外の世界を知ったからこそ生まれた視点があります。その二つが重なることで、この工房ならではの表現がかたちになります。
寺社装飾の鏨、仏具の黒染め
和田彫金工房の核にあるのは、和彫り彫金。鏨(たがね)で金属に意匠を刻み込む技術です。寺社装飾や仏具に用いられてきたこの手仕事は、明治の頃から大きく姿を変えていません。
仕上げに用いるのは、寺院や神社に納める仏具にも使われてきた伝統的な黒染め着色技法。深みのある黒が彫刻の凹凸を際立たせ、静かな存在感を生み出します。素材として選ぶ真鍮もまた、古くから寺社の装飾金具に使われてきたもの。和田彫金工房には、100年以上変わらず受け継がれてきた手仕事の基礎があります。


3Dと、ポップカルチャーへの視線
5代目・和田瞬佑が工房に持ち込んだ新しい視点のひとつが、原型制作に3Dモデリングを取り入れることでした。デジタルの精密さで意匠の骨格を組み立て、最終的な表情は職人の手で仕上げる。そんな制作プロセスが、伝統技法に新たな可能性をもたらしています。
もうひとつは、寺社装飾の意匠を、漫画・アニメ・ファッション・刺青と同じ「日本のビジュアル文化」として捉え直す視点です。映像や物語の現場を経験してきたからこそ、伝統と現代を切り分けずに見ることができる。その視点が、工房の表現に新しい広がりを与えています。
そして、いま
伝統と現代を、ひとつの手でつなぐ
伝統技法を守ることだけでも、新しいデザインを生み出すことだけでもなく、その両方を行き来しながら一つのかたちに結ぶこと。それが、和田彫金工房のものづくりの核です。寺社装飾の鏨が現代のアクセサリーに陰影を残し、3Dモデリングが下絵の精度を支え、最後の表情は職人の手が決める。仏具に受け継がれてきた黒染めは、胸元に下がるペンダントにも静かな深みを与えます。
伝統工芸とポップカルチャー、そのどちらにも片寄らず、両方を横断するプロダクトへ。和田彫金工房は、今の時代にふさわしい日本の装飾を模索し続けています。
祈りの場から、日々の装いへ

和田彫金工房の仕事は、いま少しずつ新しい場所へと広がっています。寺院や神社という祈りの場を支えてきた技術を、個人の暮らしに寄り添う装飾へ。そして、日本の意匠が持つ力を、国境を越えて伝わるプロダクトへ。
もともと工房が手がけてきたのは、仏具や祭具など、多くの人の祈りに寄り添う金属装飾でした。そこには、ミリ単位の精度と、長い年月に耐える美しさが求められます。100年先まで残ることを前提に磨かれてきた目と感覚は、身につけるための小さな装飾においても、細部の表情として息づいています。
龍、鳳凰、般若、髑髏。和田彫金工房が彫り続けるモチーフは、寺社装飾だけでなく、漫画、アニメ、ファッション、刺青など、時代やジャンルを越えて愛されてきた日本独自のビジュアル言語でもあります。だからこそ、工房のアクセサリーは単なる装飾品ではなく、日本の美意識や物語を身につけるための入口になります。
祈りの場で受け継がれてきた技術を、日々の装いへ。日本のなかで育まれてきた意匠を、世界の誰かの胸元へ。和田彫金工房の彫金は、これからも静かな存在感を宿しながら、身につける人それぞれの物語に寄り添っていきます。



コメントを書く
このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。