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記事: 宮津商店|高岡の金属工芸が映す、もてなしの心

宮津商店|高岡の金属工芸が映す、もてなしの心

高岡の金属工芸が映す、もてなしの心

富山県高岡市。およそ四百年にわたり、金属工芸の技が受け継がれてきたこの地で、宮津商店は1938年に歩みを始めました。

戦後の混乱期、同社が向き合ったのは、人々の暮らしを支える鋳物の鍋でした。火にかけ、食を整え、家族の日々を支える道具。その実用の確かさこそが、宮津商店の原点です。

やがて暮らしが少しずつ落ち着きを取り戻すにつれ、茶道や華道といった日本文化も、再び人々の生活の中へ広がっていきました。生活を支える道具から、心を整え、場をしつらえる工芸品へ。宮津商店は、高岡に根づくものづくりの力を背景に、日本の美意識を映す品々を届ける存在へと歩みを広げていきます。

宮津商店の金属工芸品

茶と酒に宿る、もてなしの心

宮津商店の品々から感じられるのは、日本の暮らしに息づいてきた「おもてなし」の精神です。

一服のお茶には、静けさと調和があります。一献の酒には、相手を思い、場を温める心配りがあります。茶と酒は、単なる飲み物ではなく、人と人が向き合う時間を整えるための文化でもあります。

道具を選び、湯を沸かし、器を手に取り、相手のために一杯を差し出す。効率や合理性が優先される現代において、その一連の所作は、暮らしの中に忘れられがちな豊かさを思い出させてくれます。

茶と酒を通して、場を整え、人を思う時間を支える。

宮津商店の鉄瓶や酒器は、そうした時間に静かに寄り添うためのものです。使うほどに手になじみ、時を重ねるほどに表情を深める。道具でありながら、場の空気を穏やかに変えていく存在でもあります。

高岡という、金属の街

宮津商店のものづくりの背景には、富山県高岡市に受け継がれてきた金属工芸文化があります。

高岡は、加賀前田家のもとで鋳物づくりが奨励されたことを源流に、約四百年にわたり技術を磨いてきた産地です。金、銀、銅、錫、アルミ、鉄。多様な金属を扱うこの街では、鋳造、仕上げ、着色、彫金といった各分野の職人が、それぞれの技を担いながら、一つの品を完成へと導いていきます。

高岡の金属工芸を象徴する制作風景

高岡のものづくりは、ひとりの作り手だけで完結するものではありません。専門の技を持つ職人たちが分業し、互いの技術を重ね合わせることで、深みのある表情と高い完成度を生み出します。

宮津商店が扱う鉄瓶や茶道具、酒器にも、その分業の美が息づいています。造形の確かさ、金属の肌合い、色の奥行き、細部に宿る装飾。そのすべてが、産地に蓄積された技術の連なりによって支えられています。

色を生む、見えない探究

高岡の工芸品において、着色は単なる仕上げではありません。金属の表情を決定づけ、作品に品格や奥行きを与える重要な工程です。

金属工芸品の着色や仕上げのディテール
ARTISAN 職人の感覚が支える色づくり

着色の工程では、素材の状態を見極める経験と感覚が欠かせません。金属の肌、温度、湿度、薬品や素材のわずかな違い。目で見て、手で確かめながら、職人はその時々にふさわしい仕上がりを探っていきます。

MATERIAL 漆や酢、素材の状態を読む

着色に用いられる漆や酢などの素材も、季節や環境によって扱いが変わります。わずかな違いが、金属の発色や定着、艶の出方に影響するため、職人は素材の状態を細やかに見極めながら手を進めます。

FINISH 素材の力を引き出す

宮津商店の品々には、そうした目に見えにくい探究が重ねられています。金属が持つ質感を活かし、色に奥行きを与え、使うほどに味わいが増していく表情へと整える。その仕上がりの奥には、職人の経験と妥協のない手仕事があります。

伝統を映す鉄瓶、暮らしに咲く酒器

宮津商店が届ける品々には、日本の自然や歴史、吉祥の意匠が映し込まれています。

富士山を題材にした鉄瓶には、日本人が古くから仰ぎ見てきた霊峰へのまなざしが宿ります。北斎の富嶽三十六景を思わせる意匠、琳派を想起させる華やかな文様、唐獅子や象嵌を取り入れた重厚な作品。それらは、ただ湯を沸かすための道具ではなく、日本の文化や美術の記憶を日々の中へ招き入れる存在です。

富士山や吉祥文様を取り入れた鉄瓶
Iron Kettle

鉄瓶

湯を沸かす道具でありながら、富士山や吉祥文様をまとうことで、日本の美意識を日常へ引き寄せます。

Sake Vessel

酒器

金属の保温性や保冷性を活かし、冬はあたたかく、夏は冷たく。季節に合わせて酒を楽しむ時間を整えます。

Tray

富士の稜線や桜の意匠を取り入れ、日常の食卓から特別な席まで、もてなしの場に静かな華やぎを添えます。

Object

飾りと遊び心

鑑賞するだけでなく、小物入れとして使える品もあります。工芸美と実用、そして遊び心が自然に重なります。

宮津商店の酒器や盆を用いた食卓の風景

飾って美しく、使ってさらに愛着が湧く。宮津商店の工芸品には、鑑賞と実用のあいだを自然に行き来する魅力があります。

受け継がれるものを、次の暮らしへ

宮津商店が届けているのは、古いものをそのまま残すためだけの工芸ではありません。

高岡に受け継がれてきた技を大切にしながら、現代の暮らしの中で自然に使える形へと整える。茶道具としての格式、酒器としての粋、日用品としての親しみやすさ。そのいずれも損なうことなく、今の生活に寄り添う品として届けています。

一つの鉄瓶を手に取る。一つの酒器で酒を注ぐ。盆の上に器を置き、誰かを迎える。その小さな所作の中に、四百年の産地の技と、八十年以上にわたり道具を見つめてきた宮津商店のまなざしが重なります。

湯を沸かす、酒を注ぐ、器を置く。何気ない動作を、少しだけ丁寧な時間へ変えてくれること。宮津商店の品々は、日本のもてなしの心を、これからの暮らしへと静かにつないでいきます。

日本のものづくりを伝える映像として

宮津商店のものづくりは、海外向けに日本文化を紹介するメディアでも取り上げられています。

NHK WORLD-JAPANの番組内では、高岡の金属工芸や宮津商店の仕事について、10分30秒頃から約3分間紹介されています。映像を通して、工房の空気や職人の手仕事をより深く感じていただけます。

NHK WORLD-JAPANの紹介動画を見る

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